恋は心を割る流星

悲恋

08

涙の飴玉をあげる

落日の愛が眠れば

終末も君とともに

純情を邪に変えて

花嫁だけの結婚式

10

心の奥に押し込んだ愛

瞳に呑まれて奪われる

言葉の端に愛を伏せた

最後のキスは訪れない

叶わない一途は永遠!

憧れのコラージュは君

愛の落日を歩く一生涯

12

雨に濡れても君に会えない

涙にキスをして、乾く前に

空のどこかに君はいますか

かわいそうだけ愛さないで

胸の熱が重くて動けないの

心が弱くなるのを待ってた

愛してはいけない人がいい

水平線にいる私を見つけて

二番から後を全部ください

好きになるほど、離れたい

誰より嘘で純愛がしたくて

セーラー服の君しか知らず

孤独の終わりはいつですか

16

ひび割れた心臓を打ち鳴らした一言

混じり合わないで、心を浸さないで

一つ知る度何も知らないことを知る

誰も知らない所なら君を愛せるのに

君を見つける旅もそろそろ飽きたい

信じるよ、僕のためにとり繕う嘘を

どれだけ好きでも、どこにもいない

君だけ見つめられたら天国だったな

スクリーン越しの君は僕の会える夢

お情けのキスでも本物にしたいから

人を困らせる才能に僕だけはと思う

簡単な関係の方が心がすり減らない

無二である程期待は恋を殺すのが友

友と呼び友と呼ばれて、恋、共倒れ

夏だけつなげる君の手は透けていて

愛しちゃいないが、嫌いじゃないよ

君の口紅の味を忘れて、大人になる

理想郷にて待つ。冷めた夕食と共に

20

この世で一番幸せの形に近いきみの密度は0

笑顔が苦手な君の一番得意なことは自己犠牲

お互い増やす隠し事、躱し話して続けよ生活

誰とキスしたかって知らなければずっと初恋

先送りにした告白が泣く君と共に帰ってくる

焦がれるほど軋む自重で憧れは星を生むんだ

恋歌に身を重ねるときだけ、僕の恋は美しい

どうせ恋が燃えるなら、君の光になって死ぬ

君のうたが僕のためだけにあればってお互い

墓参りは今日で最後。次に会うのはあの世で

別れは旅の岐路。寂しくないよ。また会おう

ここにはすべてがある。何が不満だと言うの

どれだけの告白も唇に触れたことはなかった

24

心にペン先のメスを入れて、君のすべてを書き込んで

なにも聞かないでいいよ、この声も、呼吸も、心音も

君の一言を覆う「だけど」の余白が苦しくて、美しい

どこにも還れないならここにいていいよ、ここにいて

あなたの手に誰一人触れないでほしい、わたしですら

誰も知らないこと一つだけ教えて、それ以外いらない

神様は君の姿をしている。一番会いたくない人の姿を

一緒にいるの楽しいよって言う。本当はずっと苦しい

夢でも君はそっけない。そういうとこ嫌いになれない

君の心が買えたなら。買えないから好きなんだけどさ

無償の愛ならいらない。返すべきものが増えてしまう

救われる度虚しくなる。君に釣り合うのは僕じゃない

背も歳も知恵も追い越してそれでも君の心に届かない

腐れば元には戻らない。それでもこの心を食べるの?

君との間に引いた一線が日に日に太くなるのが怖いよ

恋の歌が聴けない。この気持ちに気づいちゃいそうで

誰かを見た瞳で見ないで、嫌いになる、なれないけど

君という星が地に落ちて手に届く日をずっと待ってる

私が好きなだけだから、なに食わぬ顔で微笑み返した

再発する病、恋愛、発熱、嫉妬。また熱を求めて病床

厳選された心の言葉はきれいすぎて、まるで純愛だな

香水から泥の臭いがして知りもしない同郷に焦がれた

僕が死んだ日に泣いてみろ。そしたら全部認めてやる

骨は遺さない。自由になりたいし、なってほしいから

望むほど高くなる頂がまだ額縁にあった日の恋を恨む

歩き方も忘れた幽霊は、君の帰り道を上半身でなぞる

かみさまのラブレターは古い書庫のしおりになったよ

僕が言いたかった言葉を全部勝手に飲み込んでずるい

好きか嫌いかなら好きよ。好きか憎いかなら憎いけど

恋人の母の胎まで清廉であれよと望む僕らの愛は永遠

嫌いなところを一つずつ諦めて僕らは恋を営みにする

君は人生で一番白い嘘を着て一番きれいな嘘を誓った

人のちっぽけな時間に半分いた君が空になっただけで

君が死ぬ日に僕は死ぬけど、僕が死ぬ日は知らせない

君の隣の予約席、いつまで取っていてくれるだろうか

僕の隣の予約席、暇だし待つよ、とりあえず死ぬまで

遠い国から歌う愛がただ一人のためだと君も知らない

好きなとこより嫌いなとこを数える時間が増えていた

さよならわたしの幽霊さん。また死ぬ日までお元気で

左手は墓まできれいなまま、右手の薬指にペアリング

あなたの愛は嘘だけど、そんなところも愛していたよ

たった一つだけ守ってほしい、決して愛を誓わないで

あなたがいない未来でも、幸せだったと言えるように

28

君の吐く毒を飲んだ。この痛みは君の痛み、僕の痛みを覆う薬

私の嫌いな人は君の好きな人。私の好きな君は、君の嫌いな人

親友、理解者、将来もお隣さん。この夢どうか壊さないでいて

悪の女王も姫との別れも全部おとぎ話にしてハッピーエンドへ

本気にしないで。嘘のままなら減らず口。恋を隠すならば日常

約束の地は更地になって、それでも方向音痴の迎えを待ってる

「返事はいらない」チョコレート。勝手に決めるな、俺の答え

嘘と噂で飾った姿を君が一番愛してる。本当の君が好きなのに

ふと香る。君は紅茶が好きだから、君も薄味。砂糖をあげるよ

ふと香る。珈琲好きが鼻につく。食えない君には砂糖をどうぞ

美しくなるのを引き留めたいけど子どものままでもいられない

右利きの君の右側あえて立ち、ぶつかるひじと、握れぬ利き手

地獄はどうだい。彼岸には帰れよ。お前がいないから酒が余る

特別な君が好きだった。破天荒が普通になる。君も普通になる

百点、九十九点、八十点、六十点。減点式の愛情を破り捨てた

32

あの子に笑いかける君にかき乱される。別に君のこと好きじゃないけど

叶わない約束を腐るほどしよう。どれか一つが繋ぎ止めてくれたらいい

「引き留めたら待ってくれますか」、その一言すらずるくて口をつぐむ

教室の隅から無言の恋文を。もうここを埋め尽くすほど書いた孤高の恋

かわいい声で鳴く小鳥の君、好きって答えを覚えて真似る、空っぽの愛

言葉を避けると生まれる名前のない約束が小指をすり減らし糸が解ける

どんな家にも一つ二つある言えないまま重ねた洗濯物は幸せで薄汚れて

君のお墓はいつだって綺麗。うらやましいなあ。僕は入れやしないのに

もじょもじょしゃべるねごとから、本当に愛する人の名前を聞いたとき

36

泣きすがる君をなぐさめるこの時間だけ引き延ばして、人生とさせてくれないか

40

誰の言葉にも揺れないで。私の口は君のためだけにある。誰を信じるべきかわかるでしょ

なにか得るたび、君の方が重くなって、僕らの天秤は釣り合わない。お互いそう思ってる

白紙のラブレターをあげる。愛なんてこんなんでいい。君の手にこの白紙があればいいよ

心臓を取り替えよう。一歩先へずれる心音が二人の足音と揃うときだけ僕らは生きている

恋をするなら君を選ぶ。好きでもない人に好かれる気持ち悪さも君となら殴り合えるから

嫌いチェックリスト百個満点を好きチェックリスト一個でゴミにするから学ばないままで

「勝手にいなくなる」を「やな奴から離れた」にできなくて、優しい人を一番うらむ今日

「なんでわかってくれないの」って言う君のプレゼントいつだって本当は嬉しくなかった

写真、トーク履歴、フレンド一覧、スマホの中で君は生きてる。既読無視から目をそらす

この目も声も知っているくせに。追いがちの姿、上ずる音程。知らんぷりしないでどうか

48

大人になっても叶わない恋が幼稚なまま残っていて、君に会うたび困らせてしまう。また自分が嫌いになる

君を透かしてあの人を見る。そんな視線も見透かして、それでも君は清らかに笑う。だから透き通っている

伝わらないのは君のせいです。夏よりも熱い君に恋の体温は無に等しい。熱かぜも君の前じゃ溶かされる側

信じたくないよ。踏みつけてきたこの傷に、それがいいなんて言うなよ。それじゃだめってわかってんだよ

神様ほど美しい人は星座になる。地獄は土の下にある。君に二度と会わずに済む。それだけが君の負う罪だ

背を超されても僕の呼び名は敬称。もはや君だけのあだ名。こんな大人になるなよ。あるいはそのまま僕を

あなたはずっと空でした。救いの朝も優しい夜も、泣きたい夜明け、震える夜更け、すべてが空で愛でした

50

器用な言葉を選び抜き、きれいな私でいたいのに、落とした言葉を拾い上げ、これが好きだと見せつけないでよ

56

春を越え折に触れ会うたびに知らない一面が増える。毎日「おはよう」と言い合ったあの頃の面影がいなくなる日よ来ないで

何度目のデジャヴ。遠ざかる足音と解錠音。一足減る靴とは二度と会わない。夢なんだろうか。またいつか見るんだろうなぁ

才能は人に夢を見せて法則的日常を物語に変える。そんな世界の中、あらすじ一言で済む僕と死んでくれる君を待っているよ

君のとこだけ何度も繰り返す文化祭のメイキングビデオ。僕というカメラに笑いかける、あの日の君だけはずっと変わらない

君をなでる手があまりに不器用で、本当の愛はこんな湿った手ではないのに、ただ唇をかんでそれでも愛の足しにしてほしい

80

僕ばかり不自由だ。君はこれから誰を好きになってもいい。だけど叶うなら、どれだけ望んでも僕を好きにならないようにしてほしい。それが唯一君が負う不自由であってほしい

100

魂とか無くていいのに。死んだら全て終わりにしてください。楽園も救いもいいです。嬉しかったこと、辛かったこと、思い出、トラウマ、君との恋。皆忘れてください。そうしたらやっと、君を愛し、恥じることができる

140

君のためなんて言えない。幸せな君の隣にいたいってエゴだ。人間は自分のものを自分で変えられると信じてて、君が手の届くとこにいる限り幸せにできると信じてる。そして勝手に裏切られてる。だから恋人にはならない。君は自分のものじゃない。幸せにはできなくて、だからこそ永遠に幸せを願えるものだ

僕だけは君を救える。きっと今まで君に恋した人もそう言った。それでいいと思う。勇者が世界を救えるのは自分しかいないって信じているから。誰かを守る人はそうできている。僕だけは君を救うよ。嘘だよ。でも約束しよう。君が救われない限りそう言えること。このさき生まれるどの勇者にも渡せないこと

「君を生き返らせる魔法があるなら」きっと俺らは同じ選択をする。たとえその身を失おうと。優しさじゃない。君が死ぬ理由になりたくない。「でもあのとき救えただろ」って言われたくない。俺のいない明日を生きる君を思うより大事なことだ。だから恨めよ。俺が死ぬのは俺のせいだ。君のせいじゃないよ

君の頭上に天使の輪。呆けた僕に対して、君は不思議そうに首を傾げる。僕だけが見えている。まるで太陽がもう一つあるみたいだ。君が話すとき、走るとき、手を差し伸べるとき、輪は煌々と輝く。君が僕に笑いかける。輪はひときわ光を放つ。熱い。目を絞る。視界が白む。僕は君を見ることもできないのか

240

「世界が終わる日には何をしますか」彼女の言葉にそっぽを向いて、キーボードを打ち続ける。……ちらりと盗み見る。両手で頬杖を突く彼女は楽しげに微笑む。「何だ」「世界が終わる日もこうかなって思ってました」彼女はキャスターチェアを引いて隣にやってくると、肩に寄りかかってきた。「邪魔だ」「いいじゃないですか」「何の意味がある」「今日が世界の終わりでもいいように過ごしていたいなと」何も言えなくなって、またキーボードを打ち続ける。肩の温もりに心がざわつく。彼女はこの世界滅亡計画を知っていた

失恋

08

思い出が嘘になる

お姫さまはおわり

渡り鳥に恋をした

煙草止めたんだね

経験ばかりが豊富

10

さよならを言わないで

さよならは数え飽きた

君の運命に重ならない

12

君の名シーンに僕はいない

友達ごともうやめよっか?

許してないけど笑えるだけ

魂の偶数はいつか割れる愛

お互い弱さを愛せなかった

君の好きが手に届く一歩外

いつも好きなひとの三番目

14

好きならわかってほしかったな

よこしまを見捨てられずにいる

忘れられるなら今すぐそうして

さよなら、二度と会いたくない

君を忘れたらまた恋してしまう

嘘を愛されるのに疲れちゃった

恋の終わりに間に合わなかった

16

「大好き」の中にぼくはいなかった

どこにいても君は僕の反対側を向く

エンドロールも無い僕らは打ち切り

君の後ろ姿を一番知っているのは僕

嬉しかった記憶まで憎くさせる笑顔

校舎の隅、桜だけが知る恋の終わり

20

どの一言が駄目だったんだ、それとも全部?

今さら言い出せないをもう何年も続けている

ずっと昔にいた君の日記をなぞる。恋をする

20

どの一言が駄目だったんだ、それとも全部?

今さら言い出せないをもう何年も続けている

三年間の夏祭り。三人、二人、一人と減った

24

幸せになってとか嘘です、だって隣にいないじゃんか

すてきな言葉をありがとう、なに一つ届かなかったよ

どこにもいないあなたを見てたってその視線で気づく

新しい服を買おう。あなたを知らない服が欲しいから

誰も知らない僕の大好きは誰も知らずに思い出になる

最初から君の心に私はいなかった、ってことにしたい

手を差し伸べたってまるでここにいないみたいな僕だ

隣にいられるだけでよかった。嘘ではないよ、嘘では

「誰よりも知っている」を誰も君も知らなくて、一人

君の人生を変えるたった一言と僕の贈った幾百の恋文

あの人へ贈る告白少しだけ切り貼りすれば僕への軽口

君は魔法のキスで目覚めない。運命の人は俺じゃない

誰かのものになるなら、はじめから好きにさせるなよ

誰かのものになるまで恋が自由なら君に贈りたかった

新しい服もアクセもあなたには同じ私でどうでもいい

28

これが僕の物語なら雨が降った。そして君のために空は晴れた

浮き立つ思いを詰めて風船は君の手の届かないところで割れる

大親友、無二であるなら恋なんて叶わなくてもと思えずに不実

青春と称し叶わなかった全てが辛くてよかった恋だと思えずに

君の「好きになっちゃたで賞」にノミネートもされねぇのかな

そのピアスかわいいねって言うけれど僕も君とも趣味が違うね

32

街で見かけたあの子の不器用なおめかし。ねぇ、手を繋いでどこ行くの

ささくれが深く剥けたような恋でした。君にとって私そんなものでした

何度生まれ変わっても君に出会うなら、僕はまた叶わない恋をするんだ

「一番じゃなくていいから」なんて弱音も本音もごちゃまぜなすがり方

36

失敗作ばかり食べた。本命がどれだけ美味くても、努力は君と僕しか知らない味

40

いつだって別れられたよ。一番傷つかない日を選ぼうとして、一番傷つける日に破裂した

言い訳だけが上手いのに、君には「運命じゃなかったね」なんて泣きながら言ってみじめ

48

ただの紙です。心がこもってても、かわいい便せんでも、ただの紙です。捨てちゃって、こんなラブレター

だだっ子だ。追いすがるこの無様さに、それでも優しい言葉をかけてよ。嘘でも拒否でももういい、どうか

64

牛乳、しょうゆ、歯ブラシ、歯みがき粉、シャンプー、リンス、イス、ふとん。君がいる前はなに使ってたっけ。換気した新居にも君の残り香

邪恋

08

君の目を奪えたら

翼を手折ればまた

彼岸で待っていて

その唇は甘い麻薬

10

血の味がするまで熱く

ラブレターを燃やして

12

涙で君が溺れたらいいのに

抱きしめても温度が無いの

目を焼いたのは君という光

君は泣き顔が一番かわいい

ごめんね、こんな愛し方で

逆らえないことを愛と呼ぶ

16

幸せが鳴いている。殴るとよく鳴く

閉じ込めても気が晴れないのはなぜ

優しさの作り方、まず心を殺します

この愛は優しさなんかに収まらない

自由な人、翼を奪えど心は奪えない

恨んでないよ。死んでやるけどね?

20

握り返す手が絞めるように強くて骨が鳴った

ませた肉感小さな手。遠い国の恋人はいつか

「帰ってくるなら今」、甘言はいつだって罠

24

この好きをぐちゃぐちゃに切り刻んだのはあんただろ

誰かを殺して君が手に入るなら、ずっとずっと楽だな

正しい言葉を組み合わせてわたしの心に栓を刺してね

地獄にあなたがいるなら鬼になってでも会いに行こう

常識っていうきみの脆い心の壁を優しく剥いであげる

どんな美しい手であなたを抱いても絞め殺すばかりだ

顔も肉も心も剥いだから、ようやくあなたに愛される

傷つけ合った体はもう他の誰にも見せられれないから

人を呪わば穴二つ。でも一つでいいよ、共に眠るもの

心を壊してくれてありがとう。同じようにしてあげる

僕の知らない所で死んで。ずっと夢を見ていたいから

抱きしめていたい。これは枷。この体の重みは君の罪

雨が恋の終わりなら、あなたを雲の上に連れて行こう

恋の怪電波百万ヘルツ。可聴域外なら愛でも言えるわ

壊れるほど愛すなんてよくも。壊れたら縋れないだろ

沼へ。あえて踠いて深みへ。助けに来て、殺してやる

笑顔、優しさ、隣。全部売り切れだから恨みを買った

ほこりを被った恋心、全部火を付けても湿気っている

関係に卑猥な加工を施して消費されゆくかつての純愛

28

ぐしょぐしょに泣いてふやけたわたしをそっと握ってすする君

殺してやった人間の血の雨が、君の白い傘を濡らしますように

財布から愛までだらしない君が一日だけ贈る花を踏めずにいる

ゆううつというぬるま湯で溺死する二人のことを生活と呼んだ

32

どんな指先だって触れられないから、ナイフ製の爪先でその喉を刺した

ねじ曲がっても高く伸びようとする君の芽をそっとダンボールで覆った

あなたの耳元で呪詛を唱えるから、あなたは誰の悲鳴も知ることはない

足りない心を埋めてあげたいのにその穴に噛み合うのは牙のような言葉

心が重いほど愛も重くなる。それが嬉しい。いっそその重さで沈めてよ

痛いほどわかるよ。抱きしめ方を知らないんだ。ただそれだけなんだよ

汗に酔う。世界とはここ30cm。恋人も愛も捨てた熱帯夜にようこそ

あの日を映した写真立て。今日からこれが君の体。君は永遠に美しき日

春の幽霊は温かい。心臓が無い。人間が好きで、まねして、人を食らう

誰にでも優しいのは僕だけ焦らしたいからって気づいてたまらなくなる

みんなに贈る優しさねじ曲げて全部自分のものにしちゃう君はかわいい

ぬかるみを抜け出すよりも楽なのは、嵌まることだと嵌めてから思った

36

君の血から生まれる詩を僕はかみしめて、かきむしりたい胸の痛みに味を占める

40

ぞうきんみたいな服からのぞく薬指が指輪ごと取れちゃえと願ったとき君は袖口を隠した

かつてのままごと感覚で口づける。何も本気じゃない。だから許してなんて大人の言い訳

君が死ぬ理由に二度もなる。何度でも蘇ると君は言う。だから何度でも殺してしまうんだ

56

食事に毒が入っていたら。私があなたをいつでも殺せるのは、いつでも帰ってきてくれるから。愛しています。いただきます

64

気になるあの子を洗濯機に仕舞ってミキサーにかけよう。恋のドキドキジュースのできあがり。一ヶ月かけて飲み干す。涙割りがおすすめだよ

祈って墜ちる流星群。輝く星は詐欺師の才。神を模した美しさ。墜つ願い星チリにして本性。だから私は願わない。祈って化かせ、突き墜とせ

72

君を抱きしめるとき、君の命はこの胸の中にあって、いつだって殺せる距離だと思うと嬉しくなる。君を殺さないと堅く誓おう。それでも君は僕を殺していいよ

100

世界が終わる日はあなたに会いたい。積み上げた大切が無残に散る様に、狂い崩れる顔が見たい。世界が終わる日はあなたに会って、この身をもって証明したい。死ねば狂うほど愛されていたと。それだけあれば死んでいい

140

僕を抱きしめる度に君は少しずつ歪んでいく。僕の頬が置かれた頭頂が、脇腹で挟まれた腕が、胸と腕で押し潰された胴が。誰を抱きしめたって、少しずつ埋まらない肉体の隙間に風が吹いて、君の体温を下げる。君は誰とも噛み合わない。君は僕の形になる。同じように、僕も君の形になる。互いだけが体温だ

心中

08

天国に会いに行く

やっと救われるね

結ばれる地を求め

幸せ定規の端は死

結ばれる地を求め

幸せ定規の端は死

10

二人の恋を海に沈めて

これからは寂しくない

12

この手の中で死んでほしい

誰かのための楽園を出よう

太陽はもう僕らを追わない

太陽はもう僕らを追わない

14

大丈夫、心も愛も死なないから

海に行きたいという一言が合図

16

置いてかれたくないのは同じなんだ

古びる前の体で君と終わりたかった

殺してもいい君に殺してほしい僕ら

20

教科書に載らない愛が一番優しいときがある

24

一番美しく死ねる日が君と僕のホントの誕生日だから

長く愛した方の勝ち。そんな約束も引き分けになるね

花瓶の花と僕らの違いは死ぬ日を自ら決められること

生まれ変わっても二度と愛さないで、また殺しちゃう

花瓶の花と僕らの違いは死ぬ日を自ら決められること

生まれ変わっても二度と愛さないで、また殺しちゃう

32

君の後ろ姿があまりに美しくて、今すぐ背を抱いて飛び降りたくなった

神様も君が好き。神の愛と僕の愛は同じで、だから殺してしまうんだね

風が吹けば落ちる、それほど軽い。重しになりたかった。重荷で落ちた

君の人生は君のせい。だから最後くらいは、俺のせいで死んでしまえよ

この先に地獄があるならまた呼んで。ここで死ねるなら地獄でも死ねる

40

誰も死ぬ理由を知らなくていい。きっとわからないし、この秘密だけは傷つきたくないよ

風邪だよ、希死念慮なんか。でも風邪で死ぬ人がいる。うつってしまうよ、それでも君は

40

誰も死ぬ理由を知らなくていい。きっとわからないし、この秘密だけは傷つきたくないよ

風邪だよ、希死念慮なんか。でも風邪で死ぬ人がいる。うつってしまうよ、それでも君は

48

この世に自分のものなんて無いけど、君と死ぬときに、君は僕で、僕はやっと僕のものになったと思えたよ

100

待ち合わせなんていつ以来だろう。ひざびさに見たあなたは確かに老いていて、でも急いていく胸はあの頃の熱さと同じだ。何かわからないけど何かが叶う気がする、そんな感覚。その何かは、あの頃は恋で、今は安らぎだ

騙されてること知ってるよ。死ぬのは、愛してるからじゃなくて、一人になりたくないから。いいよ、同じだよ。これは嘘の愛だ。だけど、お互い叶えてあげたいんだ、本当の願いを。それは愛だよ。だから、一人じゃない

140

ただ救われたかっただけ。苦しまず済むならそれがよかったし、君を苦しめたくもなかった。それでももう死ぬことでしか救われないし、それでもいいと君は連れ添ってくれるんだ。君を生きる理由にできないことが心底申し訳なかった。あるいはこうなる前に君が手を差し伸べてくれたら、また何か違ったかな

240

「明日はどこへ行こうか」言った瞬間自分でも驚いた。君は笑う。「どこへ行こうか」その言葉が本当になる気がして、怖くなった。うつむいて言う。「予定通りで」君は同じ笑顔のまま、「そっか」と返してそれ以上言わなかった。今日が大事になるだけ明日が怖くなる。同じ明日が来るとごく自然に期待する。こんな気持ちにまたなるなんて思わなかった。君も同じだろうか。でももうどこへも行かない、それでいい。今日が恋しいまま終えよう。自分の人生が大事だったと思って死にたいから。君にそう思って死んでほしいから

心中を「飽きた」と言って放り出す。いつものことで腹立たしさも無い。「死ぬまでが一番楽しい」あなたの煙草は死に近い匂いがする。「計画も買い物も心中も、するまでが楽しい。死ぬために君と歩くと、君の命が私の手にあり、私の命が君の手にあると実感する。そうしてとても満たされる。だから何度でも心中は楽しい」「してないでしょ」喉をガラガラ鳴らして笑う。「また来てくれるだろ」僕は目線を逸らす。ほとんど答えだった。「本当に、死ぬなら君がいいんだ」僕は騙されてる。でも騙されるのは僕だけがよかった